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戦う税理士 小栗のメールマガジン
「タックスヘイブン税制(CFC税制)も厳しくなってきているようです」No.990
皆さん、こんにちは!戦う税理士の小栗です。
朝晩は少し秋らしくなってきましたね。
暑さが和らいだとはいえ、まだ最高気温が30度を超える日も多いです。
なんとなくこのまま秋がなくて冬になってしまうのではないかと少し心配しています。
最近は富裕層の節税策として、税金のない国や低税率の国に法人を設立して、
そこで運用などをするスキームが流行しているようです。
先日、東京地裁でこのようなスキームに対して重要な判例が出ています。
海外での運用が当たり前のようになってきた昨今では、注意をしなければならないポイントも多そうです。
ということで今回の
「難しくてためになる話を優しく解説」するメルマガは、
「タックスヘイブン税制(CFC税制)も厳しくなってきているようです」です。
このスキームは少々複雑です。
・資産家のAさんは、リヒテンシュタインに財団法人を設立
・財団はバハマに法人を設立(バハマはタックスヘイブン国)
・バハマの法人は公社債などで運用をし、その利益は非課税
日本の税制でも一定条件の下では、このスキームは問題なく
事実上の富裕層の節税策としても注目をされていました。
今回は、バハマに残っている運用益は日本にいるAさんの所得だと認定されたというものです。
実務家としては、持ち主のいない財団法人からさらに非課税国に運用会社を作るとは
なかなかよくできたスキームだなと感心します。
さて、ここで総括です。一体なにが問題だったのでしょうか。
Aさんは財団には持分がなく自分が影響力を持つこともできず、
さらにはバハマの会社は財団の持ち物なのだからAさんに課税が行われるのはおかしいと言っています。
課税当局は、財団はAさんが設立したものであり、
かつ、設立資金やバハマの会社の設立資金や運用資金もAさんが出している。
実質的に「支配」をしていると指摘しています。
では、裁判所の判断はどうでしょう。
詳細は分からない部分も多いのですが、財団の定款・規則等をみると
「財団の資産及び収入を享受する権利をAさんが単独で有するものとする」
という記載があり、
さらに規約の変更等もAさんの承認がいることになっている、
ということで財団は実質的にAさんの物であり、
さらには財団の持っているバハマの会社の株式も
Aさんの物であると認定して課税当局の判断を支持しています。
今のところ、納税者が控訴をしたという情報はありませんが、
今後の動向が楽しみです。
問題点は、客観的に見ても実質的な支配があったと思われる状況にあったということだと思います。
例えばリヒテンシュタインに事務所があり現地スタッフなどがいて活動記録などを残してあり、
またバハマの会社の投資判断なども独自で行っていたということであれば、
また話は変わってきただろうと思います。
そこまでして、海外で運用をしようと思わない、手軽に節税ができるならやりたい、
こんな声が聞こえてきそうですが、そんなお手軽な節税策などないと
思っていただいた方がよいと思います。
形式的な要件を満たしていないものは論外ですが、形式的な要件を満たしていても
「実質的要件」を満たしていなければ問題となるのが税務の常識です。
とはいえ、
海外での運用が当たり前のようになってきた世の中ですから、
これらの情報も検討しながら運用方法を検討することは
とても重要なことだと思います。
では、次回もお楽しみに。
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