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戦う税理士 小栗のメールマガジン
「拙速な相続対策は時に毒にも薬にもなったりしますので要注意です」No.984
皆さん、こんにちは!戦う税理士の小栗です。
5月ですが、かなり暑いと思う日も増えてきましたね。
私は寒いのも暑いのも苦手ですから快適に過ごせるシーズンが短くて困ります。
先日、こんな会話がありました。
懇意にしている金融機関からの相談です。
「先生、今度クライアントの資産管理会社にこんな提案を出そうと思うのですが、いかがですか?」
「うーん、よくできていますね。ですけど、これは数年前に税務否認されたトステム事案とほぼ同じですよ」
ということで
今回の「難しくてためになる話を優しく解説」するメルマガは、
「拙速な相続対策は時に毒にも薬にもなったりしますので要注意です」です。
我々の業界では有名なトステム事案とは簡単にいうと次のような感じです。
① 旧住生活グループ株式を220億円で資産管理会社に売却
② その資金で金融商品を購入
③ 金融商品を資産管理会社に現物出資
④ 資産管理会社は不動産、株式、金融商品を持った大会社になり、株価が大幅に下落
こんな感じです。
課税当局に否認はされたのですが、
スキームとしてはとてもよくできていると個人的には思っています。
詳細な説明は紙面の都合上割愛をしますが、結果としては納税者側が争わなかったので、
そのまま課税が行われています。
実は類似のスキームはよく使われていますし、課税上問題になったという話もあまり聞きません。
では、なぜこのケースは問題になったのでしょうか。
裁判になったわけではないので、公表されている情報以外は推測が入るのはお許しください。
結論を言えば、
① あまりに短期間に行われた行為であった
② 相続までの期間が短かった
これだと思います。
つまり、「過度に相続税を逃れる目的以外に、この行為をする理由が見当たらない」
これが否認の根拠となります。
では、何年もかけて行われた行為の結果が同じだったとしたら問題はなかったのか。
その行為の目的がはっきりしていれば問題はなかったのか。
その通りだと思います。
例えば、この事例でも私には上場株式だけを持っているのでは株価の変動に資産が大きく影響を受けるので、
ポートフォリオとして他の金融資産や不動産に投資をすることは投資家としては当然ではないかと思います。
また、その結果として評価額が下がっていたとしても、
それは予想ができないわけですから致し方ありません。
ただ、この事例では「ある特殊な要因」もあったのだろうと思います。
実はトステム事案と呼ばれる事件は2回目なんです。
1回目は平成5年頃に「いわゆるA社B社方式」というテクニックを使った相続対策が否認をされています。
たぶん、2回目であったことと金額も多額でスキームが複雑であったことも
問題になった原因であったのだろうと私は思います。
どんな対策でもそうなのですが、単純な贈与でさえ
相続前7年間は加算をすることになっているくらいですから、
時間をかけてじっくりと検討をするという余裕を持ってほしいと思います。
繰り返しになりますが、今回のやり方が違法であったということではなく、
あくまでも進め方が問題であったということを覚えておいてください。
では、次回もお楽しみに。
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